2013/04/27 Category : エッセイ TPP参加に反対の理由 TPPの勉強会に出たが、「さっぱり分からない」のが実感だ。「やってみなければ分からない」と言う政治家までいるのだから、わが国の行く末に不安は一層つのる。ここまで来てしまったから不参加とはならないのだろうが、<命>を守る視点からは反対、としか言わざるをえない。 既得権益にしがみついてきた産業や団体があるのは事実だから、競争力を阻む規制や保護策を外すことを進めてから、TPP参加を言うなら分かる。しかし、TPPへの参加をまず決め、規制や保護策を強制的に壊して、活気ある日本を取り戻せるとは思わない。農業を巡るTPP参加積極派の論調も、自国農業の近未来のありようを、納得させるものではない。世界異常気象や国際紛争下でも最低食糧を確保できるのか、かつて失敗した「農地の集約化」政策はどこまで可能かなど、<命>の視点からは重要な事前検討事項だったはずだ。 日本では、過去数十年間の牛肉消費量と、ホルモン依存性ガンの発生数が軌を一にするように上昇しているという。米国産牛肉等には国産と比較にならない濃度の残留成長ホルモンがあり、子宮体がんの増加はそれが原因だとの指摘もある。しかしそれを問題に輸入規制すれば、日本の許容値こそが不当な差別として訴えられる可能性がある。つい先日の、NHKクローズアップ現代では、沖縄が長寿県ではなくなったことが取り上げられていたが、欧米化された食生活が原因とのことだった。健康、寿命という<命>も個人的な食生活の問題とばかり片付けられるべきではあるまい。 安い労働力の流入で、労働者派遣法で悪化した雇用環境が更に悪化し、働きがいを失った非正規雇用者が今以上に増える可能性もある。結婚もできず、国としての生命力が削がれていきはしないかという不安も消えない。働きがいというのも<命>の大事な側面ではないのか。 極端な例えではあるが、「輸入食材でガンになり、外国からの特効新薬は健康保険の対象外で、ガン保険は外資保険が市場を席巻」という<ゆがめられた寿命市場>を想像してしまう。ガン保険に加入する余裕のない人は、特効新薬の恩恵を受けられず、更に寿命を縮めて旅立っていく。 3.11以降のだらしない政治対応を見ていると、近未来の日本像を示せないのに、経済のグローバル化を促進する制度のみで国益を論じるのは、戦略のないまま目先の戦術を議論するのに似ていると思える。 富がさらに偏在して、国民の大多数を利用した新たな利権の温床市場を日本に築くことになるのではないかという、へそ曲がりの私の疑念は晴れないまま、勉強会は終わった。 ではどうするかと自問すると、経済的尺度とは別の価値軸が必要な時代に入ったのではないかと考える。それは、基礎自治体が多くの役割を担うのであろうが、日本人の生命観に根ざした視点から政策を創り出すということだ。 テレビなどで世界に散らばる日本人の活躍を見るたびに思うのであるが、日本人の精神根源には、太陽に手を合わせ「ありがたい」と思うような心情がある。日本に惹かれる外国人が共感するのも、そんな心性の日本ではないのか。<命>を敬う価値観に基づく政策の視点から、中小企業などに眠る沢山のオンリーワンを育み、施策展開する末端現場の声を汲み上げ、結果をグローバル社会に還元する。それが行き詰まった経済優先世界に日本が示すべき役割なのではないのか、と思われて仕方ないのである。 [2回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword