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碧濤のひとりごと

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指導者の器 その2

全日本空手道連盟理事で選手強化委員長の香川政夫氏が、竹刀を用いた稽古で植草歩選手の目を負傷させた事件、植草選手側は当初刑事告訴も視野に入れていた。彼女のブログによると、竹刀稽古の危険性については、昨年12月以降、全空連理事や強化委員会のスタッフに相談していたが、事態が動き出すのは、JOCの通報・相談窓口に相談した3月12日以後だったようだ。そこからの進展は速かった。
 3月31日の全空連の倫理委員会で「竹刀で目を負傷した」との認定を受け、4月9日の理事会で香川氏の処分を決めた。先立つ7日付で香川氏は理事と強化委員長辞任の意向を示したが、強化委員長の辞任については受理されず、より厳しい「解任」処分となった。植草選手側は理事会での決定を受け入れて刑事告訴には至らなかった。
 香川氏が辞任の意向を示す際、植草選手に対し「細部への気遣いが及ばなかったことは申し訳なく、大変悔やまれるばかりです」と謝罪する文書を発表していたが、詳しい内容が不明で何を謝罪し悔やんでいるのか分からなかった。9日の理事会出席後の報道対応を見ても「不徳の致すところ」以外の反省の弁は読み取れなかった。以下、報道対応の一部引用である。気になる箇所を付番①-⑥、【】書きで示した。詳しくはネット検索されたい。
-現在の思いは
<香川氏> 報道で言われてる①【竹刀で目を突いたとか、故意でけがをさせたとか、そういったことは決してありません】。10数年、彼女と一緒に五輪を目指して稽古をしてきた。今回こういう結果になったのは残念で、私の不徳の致すところ。彼女には五輪でぜひ金メダルを取って、②【こういうことを乗り越えて強い選手に、また心身共に立派な選手になってもらいたい】。残されている私の教え子もいるし、ナショナルチームの方もいます。どうかこれまで同様、選手のために力をいただきたい。③【植草選手は私の手元から離れましたが、それも彼女が大人になる第1歩だと思います】。これからも引き続き支援をたまわれば。
-竹刀の練習はいつから
<香川氏> 年が明けてからだったと思います。④【そういう(行き違いが)重なった部分が、私も細心の注意を払って寄り添ってあげられなかったことが悔やまれ仕方ない】。空手は格闘技。受け切れなかったら目や鼻や歯に当たったり、骨折や脱臼もする。我々の空手はフルコンタクトではなく寸止めだけれど、コントロールしていてもやむを得ない時があり、けがはつきもの。そういうところで、⑤【外国人対策として私のアイデアで竹刀を用いて稽古をしました】。外国人選手は思い切って突いて蹴ってくる。日本選手も蹴られてダウンさせられることが多々あった。植草選手も試合で脳振とうを起こしたこともあった。⑥【何年か前には沖縄で目に当たって骨折し、ドクターストップで棄権したこともあった。今回ブログでは失明の恐れがあるとの本人の言葉もありましたので、案ずるならきちんとドクターの判断を踏まえて練習に励み、試合に出てもらいたい。親心ですが、そんな風に思っています】。
 手足の長い外国人対策なら体の少し大きい男子選手に代わればいい話だ。「竹刀で目を突いたのではない」なら、理事会の「竹刀で目を負傷した」という認定に反論すべきだ。この会見に、失明の可能性のある竹刀稽古の反省などまったく見られない。
 私なりに【】書きをつなげて理解すると、「竹刀稽古は(顔に伸ばした竹刀に偶然目が当たっただけで)目を突いたわけではない。竹刀を使うのは手足の長い外国人対策のためで、実際外国人の攻撃が目に当たって骨折した選手もいる。ブログを見て本人の失明への懸念を知った。私の親心を彼女に理解してもらえなかったのが残念だ。今後は医者の判断を踏まえて練習し試合に出てほしい。」 となる。つまり、香川氏は指導手段として竹刀を使うことに間違いはなかったとして、これからも竹刀指導が続くのだろう、と読み取れた。
 理事会には「竹刀で目を負傷した」ではなく「突いた竹刀が目に当たって負傷した危険な行為」と処分の具体的根拠を示してほしかった。流派寄せ集めの団体だからこういう記述になるのかも知れないが、武道世界は政治の世界とは違う。武道に日本文化を見る世界の目がある。<泣いて馬謖を斬る>の喩えはこの人に相応しくないかも知れぬが、全空連はもっと筋の通った対応をすべきだったと思う。某大アメフト「悪質タックル」事件を思い出す。植草歩さんの勇気ある告発が無駄に終わらないことを祈るのみだ。

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