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碧濤のひとりごと

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防災体制に思う

 土木現業職場の最前線に長くいたせいか、台風時期になるといつも不安になる。
 昭和52年に有珠山が噴火し、翌年土石流が流れ出た。警戒のサイレン音が雨の音に消される中、音のない泥流に足を取られながらやっと事務所にたどり着いた。胸まで泥に埋まりながら、工事途中の新庁舎あたりに流されたという子供を捜した。一刻を争うため、コンクリートを打ち終えたばかりの基礎を壊す決定を所長に仰いだ。所長が決断を下せずにいると、決定権限のない係長が「自分が責任を取るから」と業者を納得させた。まだ若かった私は感激したものだ。
 事業遂行上の課題が複雑化するにつれ、優秀な人材は本庁に偏り、他官庁との調整、将来計画の策定など調整、企画部門を専らとするようになっていったのは、そのころからだったように思う。
 そして、経済成長が減速・停滞し、3K職場などといわれるに従い、新卒技術者の能力低下は顕著になった。土木を巡る環境が急速に変わり、現場は複合課題への処理能力を失いつつあるのに、「現場の所長は誰でもできる」とでもいうような、不都合を金と裁量で解決してきた時代そのままの人事が続いているように思えた。その残滓は今もありはしないか。
 現場は土木事業が減れば配置職員数も減らされる。しかし既にできた施設の管理や維持業務は残る。その金も削減される時代だから、施設の脆弱性は今はさらに高まっているともいえる。パトロールは外注できても、責任は外注できない。警戒態勢を越えて、非常事態(災害)が起こり出すと、確認、指示、対応、報告業務が爆発的に増える。おそらく何が何だか分からない状態の現場になるに違いない。そろそろ、土木以外の職員も含めて、組織全体として、あるいは、盆や正月なら、地元に帰省中の他部の職員も取り込んで対応しなければならない時代になっているのではなかろうかと思う。経費削減と言って管理職だけで、警戒時管理をしていると、計器確認・報告業務さえ、非常時に、職員が代行できない事態になりかねないのだ。
 これまで、現場人員削減のしわ寄せは、運転手など現業職員を事務職員に回すなどして、員数合わせをしてきた。当然不足する事務処理能力を、若手職員や現場係長が補わざるを得ず、過度の負担を強いることになる。人事の沈滞、やる気の喪失、中堅職員に心の病が増えたのは業務量と責任の偏在にも原因があるように思えてならない。
 防災体制の確立は、生き生きとした職場を取り戻すための日常業務の<ありよう>から見直すべき大事案である。こんな時代だからこそ、本庁から腰を上げて、将来を期待される幹部職員も積極的に現場にはり付け、豊かな発想で、最前線職場の刷新に取り組む時なのではないかと思う。

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