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碧濤のひとりごと

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郊外

 市制が施行されて12年、今では人口6万人を超える札幌のベッドタウンである北広島市に住む知人を訪ねた。沿線の風景を見ていると、人口が1万人にも満たなかった40年ほど前、この町のどこかの川原で、背丈ほど生い茂った草わらに寝ころび、真っ青な空を見上げていたことを思い出した。そうだ、羊もそばにいて草を食んでいたっけ。
 あの頃は、札幌から、ずいぶん遠い郊外だった気もするが、今は新さっぽろまで地下鉄が数分間隔で運行し、そこからJRで二駅だから、感覚的にはずいぶん近くなっている。
 もう当時の面影はないほどに都市化されてはいるが、JRに乗り換えてすぐの上野幌辺りの沿線には、幾分当時を彷彿させる風景があって、高校時代、生物クラブの試料採取に来たその時のことを思い出したのだろう。
 風景から手繰り寄せられる記憶は、自分自身を構成する要素でもある。風景の改変を恐れる理由の一つは、普段は忘れている膨大な量の記憶を、無意識の内にある自分の尊厳を、無造作に消されてしまうことに対する反発にもあるような気がする。

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