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碧濤のひとりごと

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財政破綻都市夕張にて

赤木かん子さん 「子どもの本フェスティバルinゆうばり」に参加した。文学にはあまり興味を持たずに生きてきたが、多少、夕張に関わることになったこともあり、別次元の市民反応を感じたくて出向いた。市内に入ったのが昼飯時直前だったので、「藤の家」という食堂で、有名だというカレーうどんを注文した。後頭部から噴き出す汗にハンケチを当て、「カレーもうどんも夕張特産のものではないけれど、旨ければ、人はこんなにも来るものなんだなあ」と思いつつ、急に混んできた店の客の顔を見回した。
 今回のイベントは、財政破綻後、図書館が閉鎖されたのを機に子ども文化を守ろうと立ちあがったグループ、“かぜちゃる”の主催である。
 講師の一人、赤木かん子さんが会場に年齢を問い、挙手させた。ざっと目測すると20代20人、30代40人、40代80人、50代100人、60代70人、70代10人くらいの比率で、圧倒的に女性層だ。参加者の7割が読み聞かせを実際にしている人たちで、帯広方面からの参加もあり驚いた。因みに、学校の教師は数名しかいない。まちづくりに教師が少ないのは、昔からどこも同じようだ。 
 「直接参加型市民イベントではなく、こういう外部参加型支援も非常に大切だ」と感じながら、会場の一体感の中で講演を聴いた。
 デイヴィッド・シャノンの「ストライプ」の紹介があった。本屋でめくり見したことはあるけれど、買いたいと思うほどの感性を持ち合わせない僕のような大人が、今の子どもの心を知るにはいい本のようだ。
 ローレンス・デイビッドの、「ぼく、ムシになっちゃった」は1970年以降、“親が子どもに初めて謝った児童書”だと言う。
 大人世界の変化が子どもたちに鋭く見抜かれた結果が、児童書の売れ筋にまで影響していくという分析がおもしろかった。
 ファンタジー文学は今年で終わって、ハリーポッターを第一巻から読もうという子どもは、既にもうほとんどいないともいう。
 最近聞いた言葉かな、と思っていた、「ヤングアダルト文学」も終わりになったとかで、今は、自然科学本が“旬”なのだそうだ。
 「粘菌」は一ヶ月で増刷したとか、ジョン・グールドの「世界の鳥」は小学校一年生が借りていくとか、“変温動物もの”ともなれば小学校4年生まではお宝ものらしい。
 昔の自分なら感動したろうなと
、いつの間にか年老いた自分が聞いているのに気づいた。
 もう一人の講師、落合恵子さんは、「スプーン一杯の幸せ」を書くずっと以前に、ディスクジョッキーの彼女にあこがれていた少年時代があった。講演も文章も上手だけれど、肩の力が抜けないまま、年を重ねて見えたのが少し残念だった。怒りを伝えたければ肩の力を抜かねばならない。年追うごとにそう思う。
 イベントの余韻を感じながら、帰りがけに、“夕張鹿鳴館”に立ち寄った。閉館時に近かったので、管理員は無料で見学を許可してくれた。
 当時の北炭の幹部なのだろうか、“きれいどころ”とダンスを踊っている写真が、その大広間の壁に掛けられていた。高価であろう絵画、江戸時代の屏風、大皿等も置かれていた。リーフレットには、夕張市はこの建物を北炭から“購入した”とあったが、夕張市に“購入させた”のではないかと、いつの間にか読み替えながら見学していた。
 財政が破綻した夕張市。 この町に暮らす被害者とは誰なのか。自分はこの夕張市で何を、誰のためにしようとしているのか、札幌への夕暮れの道を辿りながら、もう少し問い直してみる必要があると感じていた。
 写真に残る過去の上層階級に、今に至った責任を誰が、どう取るべきなのか、聞いてみたい気がしたからである。

 

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