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碧濤のひとりごと

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自治とは何か

 役場職員が働き出せば、町民も動き出す。合併をしない宣言で一躍有名になった福島県矢祭町。町民悲願の図書館も、国に頼らず自立(自律)の道を選んだ役場に金はなかった。役場職員と町民との会議から生み出されたアイデアは、「古い武道館を改装し、運営は町民が行い、本は全国からの寄贈を募る」というものだった。他の自治体からの「そんなのは図書館とは言わない」、「送料も寄贈者持ちでは本が集まるわけがない」との中傷の中で、45万冊の本が集まった。新設なら建設費に10億円、図書購入に3億円は必要と試算していたが、武道館の改装費1億円のみで完成し「もったいない図書館」と名付けられた。  図書館はまちづくり、人づくりの一環だろう。検討段階から町民が参加し、既に「図書館づくり」は始まっている。利用され、喜ばれ、大切にされるための「仕掛け」と、図書館という「施設・設備」は「ものづくり」の表裏である。いま、日本のハコモノといわれる施設整備には、この“仕掛け”があまりにも不足している。「何のための図書館ですか」と、矢祭町の対応を非難した自治体に聞いてみたい気がするのは私だけではあるまい。 人口7千人のこの町には自治の原点が凝縮している。役場職員自宅の役場化、年中無休の窓口業務、教育長や助役も輪番に組み込まれているトイレ掃除。それを目の当たりにするからこそ、町民だって動き出すのだ。  その牽引役だった前町長の根本良一さんをお招きしての講演会&公開討論会を夕張で開催した。市議会議員に来てほしいために個人ごとに案内も送ったが、タイトル(議員の役割と市民の責務)のせいか、参加は2人の市議にとどまった。見落としそうな新聞案内と平日昼間の開催だったから30人も来ればよいかと会場を設営したが、周辺自治体議員の参加も多く、夕張市民30人を含め、会場は80人の活発な議論の場となった。  “本物”の人の言葉は魂を揺すぶるものだ。以下、心に残る根本氏の言葉である。もちろん書き漏らしも、書き損じもあろう。 「薄い水を合わせても濃い水にはならない。合併に利益はなかった」「夕張問題は市役所の問題であり、市議会と市長の責任だ。職員にも市民にも責任を負わすべきではないと思う」「議員は家業(稼業)ではない。専業の議員は良くない」「税金を払い、治安を守ってくれさえすれば市民として合格だ」「町長として住民のためだけを考えた。少しでも邪(よこしま)な考えがあれば、住民への背信行為だ」「職員を木に登らせれば、住民も役場への見方を変え、手伝い出す」「観光で飯を食おうというのは怠け者の発想だ。産業でも農業でもつくることが地域づくりの原点だ」「儲けなくてもいい商売は易しい」「町のためになることかどうかで考えれば、議員日当制も、夜の議会開催も、当然の結論だった」「勉強のための本代に政務調査費を使うべきではない。それは自費だ」「余計な摩擦を避けるために、合併反対と言わずに、合併しないと言うことにした。マスコミを使うことも意識した」「情報公開文書を黒塗りすると人が来るものだ。矢祭の文書に黒く塗ったものはない」

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