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碧濤のひとりごと

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庶民感覚

 久しぶりに学生時代の友人と飲んだ。「お前は俺より晩婚タイプだな」と私を決めつけていた彼だが、未だにというか、結局というか、彼の方はずっと独り者のままだった。「結婚するとは言っていない」と言い訳している間に年を取り、「身の回りの整理を始めている」と言い出した。
 悠々自適、毎日30kmを“散歩”していると聞いていたので健康な後半人生を保っていると思っていたが、最近、運転中に、『心房細動』とかで平衡感覚を失い、軽い衝突事故を起こしたり、幼い頃のぜん息もぶり返しているのだと聞き、互いの年齢と来し方を思った。
 彼はもともと物欲の薄い人間で、その上、世の中のスピードに合わせることもないから、社会生活においては、よく言えばマイペース、悪く言えば頑迷な人間に見られたのではないかと思う。だから5年前に会社を辞めたと聞いた時も、そろそろ居づらくなったのかな、と思っていた。しかし今回、問わず語りの酒談義で、「何とか暮らしていける程度の蓄えはあるし、自分の給料で若い者なら二人以上は雇える」との退職動機を聞いて、封の開かない給料袋が部屋の片隅から出てくるような昔の彼の暮らしを知っているだけに、会社から体よくリストラされた訳でもなかったのだとうれしく思った。
 ゆったりペースの語り口はいつも通りだったが、ひときわ感情がこもっていたのが、庶民感覚から離れた今の政治だった。人と群れることが苦痛だから、社会的不公正に共同で闘うなどは苦手な彼であるが、各種の社会的活動に対し、庶民感覚としての寄付はしていると言う。
 機能しない政治、浄化能力のない行政、貧富の差を助長するような雇用形態・・・。人に格差をつけるようなこんな社会になってしまったのはなぜか、と嘆く彼に、最近勉強会で討論したばかりの、市民権利としての信託解除権の有効活用などを話した。勉強しているテキストを紹介すると、酔った彼が手帳を取り出し書き留めた。政治に全く無関心だった庶民層が、無関心でいられなくなっているのが今なのだろう。
 崩壊夕張の再建に立ち上がった市民活動のリーダーの一人も、全く政治的関心は持たなかったと自認する料理好きの主婦である。庶民から市民としての脱皮社会を強調するのではなく、逆説的ではあるが、庶民が庶民でいられる社会が健全なのだと思う。

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