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碧濤のひとりごと

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相撲道

 「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」は、人間本能のなごりを言い当てた、ビートたけしの名言と思っている。上下、優劣、損得のしがらみができる組織において、正しいことが通用しない時には、黙り込むか、迎合するか、逃げ出すかなど、人は安易な道を選びやすい。戦うには、相当の覚悟がなければならない。
 今回の相撲界の顛末を見ていると、比較優位の体力と、ちょっとした才能だけで要職についた、私たちと同世代の連中がいかに多かったかが、よく分かった。引退後も相撲界に残り、一般市民を超える経済的恩恵を受けながら、昔からあったはずの八百長に一様に黙りこむ彼らに、「相撲道」とはどんな『道』ですか?と尋ねてみたいものだ。
 証拠がないことを背景に、これまで数々の告発に『勝ち続けた』相撲協会だが、携帯電話の、『削除したはず』のデータが命取りになった。
 しかし、証拠を挙げられた現役力士だけの問題としてはならない。生き残っているかつての当事者には、相撲界から去ってほしいが、たとえ人物特定が困難でも、不正を知る立場にいた全ての関係者が、今回責任を問われる若い力士の将来に対し、我がこととして手を差しのべる道議的責任はあろう。怪我や病気中の地位の据え置き、幕下以下の給与見直しなど、八百長という選択を排除するための条件整備も必要だ。
 今は亡き相撲解説者の元関脇、玉の海梅吉氏が、戦前の自身の八百長相撲を告白したことがあった。情に流された八百長だったというが、72才での告白は勇気ある行動だった。『正しく』生きることはいつの世も辛いものだ。理事という名誉を、親方という地位を捨てることのできる者がいて、初めて「相撲を残すべき」との国民の声が高まろう。引退後、取り締まる側になった彼らが、現役時代の触れられたくない問題に触れない限り、「相撲道」も生き残れないように思える。


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