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碧濤のひとりごと

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天然ガスパイプライン

 一昨年、最高気温35.7度、6千万キロワットの最大電力需要を記録した東京電力。東日本大震災後の昨年は最高気温36.1度のその日、管内住民や企業の協力で5千万キロワットに抑えた。今年の夏の関西電力も他電力会社の融通や様々な協力でおそらくは足りるのだろう。しかし、ムラ人は何としても原発を動かしたいらしい。
 せいぜい数時間の計画停電の被害だけが強調されるが、極端な話、停電になって国が滅びるとでも言うのだろうか。
 電力会社ホームページには節電要請がトップ画面に確かにあるが、どれほどの人がわざわざそれを見にいくというのか。原発推進のための電力会社PRは震災前あれほど頻繁にテレビに流していたのに、節電に関心を集めるPRを一向に見ないのはどうしてか。節電をしてほしくない電力会社の本音を象徴しているかのように感じられてくる。
 70年代から日本も参加し、資源探査が相次ぎ成功した「サハリン1」プロジェクト。今から10年ほど前には、日本へ年間750万トンをパイプラインで供給し、首都圏に運ぶ計画が示された。LNG(液化天然ガス)船は運搬距離約5千kmがパイプラインとの経済分岐点というから、首都圏まで2千km、稚内から北へ40kmの、目の前にあるようなサハリンのガスを運ぶにはパイプラインの方が有利だ。しかし、原子力発電に比べ割高だと電力会社は購入に難色を示した。理由は外にあったといわれる。
 パイプラインは、途中で支線に引くことができ新規参入者が容易に発電所建設ができるからだ。その点、LNGなら専用船、貯蔵施設が必要となり、電気会社は燃料を囲い込める。
 今、発電量の25%以上を担う天然ガス輸入量は年間約8千万トン。内6割が発電用と言われ、10年~20年の原油価格連動型の長期契約だ。大震災後の燃料需要のため、LNGのスポット価格は2倍に高騰した。LNG運搬船も足りないという。燃料高騰は結局は消費者の電力料金に跳ね返ることになろう。原発稼働制限下、この状態は今後しばらく続くのではないか。
 パイプライン敷設は陸上で1kmあたり2億円、海底敷設では3億円程度、敷設日数は驚くほどはやく、サハリンと稚内間の40数キロなら10日もあれば敷設できると聞く。中国向けの販売条件が折り合わずにいるエクソンモービルに交渉の余地はあるともいうから、少なくとも、北海道までは、パイプラインを再考すべきであろう。脱原発への代替エネルギーは天然ガスが主体になろう。CNG自動車も実用化されている。低廉な米国シェールガスの増産も始まっている。割高の原油価格連動方式に縛られない天然ガスの多様な入手手段を構築すべき時である。
 東日本大震災という悲劇を脱原発への好機として捉え、その可能性を誰がどう提案し、誰がそれを実現に向かわしめるのか。国家的プロジェクトを誘導する北海道の役割もあるはずだ。リーダーシップと政治力、政策提案力が求められている。

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