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碧濤のひとりごと

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スティーブ・ジョブズ

 5日に亡くなったスティーブ・ジョブズ。彼の死を世界中の人たちが悲しんだ。
 6年ほど前、スタンフォード大での彼のスピーチをメイリングリストで知り、人生を前向きにとらえる生き方に感激した。
 彼が生まれた時大学生であった母は、将来彼を大学に行かせることを条件に養子に出す書類にサインした。養父母は約束通り大学に行かせたが、労働者階級であったため学費の負担は大きく、生涯かけた貯金を使い果たすほどだった。彼は、退学をしたまま大学に通い続け、興味のあったカリグラフィ(飾り文字)のクラスに通って知識を身につけた。その経験は10年後、フォント機能を組み入れたマックコンピューターに生かされる。退学(ドロップアウト)して寄り道(ドロップイン)して成功した、とユーモアを交えながら、彼は学生に言う。
 「もちろん大学にいた頃の私には、まだそんな先々のことまで読んで点と点を繋げてみることなんてできませんでしたよ。だけど10年後振り返ってみると、これほどまたハッキリクッキリ見えることもないわけで、そこなんだよね。未来に先回りして点と点を繋げて見ることはできない、君たちにできるのは過去を振り返って繋げることだけなんだ。だからこそバラバラの点であっても将来それが何らかのかたちで必ず繋がっていくと信じなくてはならない。自分の根性、運命、人生、カルマ…何でもいい、とにかく信じること。点と点が自分の歩んでいく道の途上のどこかで必ずひとつに繋がっていく、そう信じることで君たちは確信を持って己の心の赴くまま生きていくことができる。結果、人と違う道を行くことになってもそれは同じ。信じることで全てのことは、間違いなく変わるんです」
 コンピューターアニメーションへの展開、それが契機となった結婚やアップルへの復帰も、アップルからの追放があった故と前向きに話す。
 「クビになっていなかったらこうした事は何ひとつ起こらなかった、そりゃひどい味の薬でしたよ。人生には時としてレンガで頭をぶん殴られるようなひどいことも起こるものなのです。だけど、信念を放り投げちゃいけない。私が挫けずにやってこれたのはただ一つ、自分のやっている仕事が好きだという、その気持ちがあったからです。それは仕事も恋愛も根本は同じで、君たちもこれから仕事が人生の大きなパートを占めていくだろうけど自分が本当に心の底から満足を得たいなら、自分が素晴しいと信じる仕事をやる、それしかない。そして素晴らしい仕事をしたいと思うなら進むべき道はただ一つ、好きなことを仕事にすることなんですね。まだ見つかってないなら探し続ければいい。落ち着いてしまっちゃ駄目です。心の問題と一緒でそういうのは見つかるとすぐピンとくるものだし、素晴らしい恋愛と同じで年を重ねるごとにどんどんどんどん良くなっていく。だから探し続けること。落ち着いてしまってはいけない。 」
 そして自身への膵臓ガンの宣告経験から、死について、
 「君たちもだんだん古きものになっていって一掃される日が来る。とてもドラマチックな言い草で済まないけど、でもそれが紛れもない真実なんです。君たちの時間は限られている。だから自分以外の他の誰かの人生を生きて無駄にする暇なんかない。ドグマという罠に、絡め取られてはいけない。それは他の人たちの考え方が生んだ結果とともに生きていくということだからね。その他大勢の意見の雑音に自分の内なる声、心、直感を掻き消されないことです。自分の内なる声、心、直感というのは、どうしたわけか君が本当になりたいことが何か、もうとっくの昔に知っているんだ。だからそれ以外のことは全て、二の次でいい。」
と話し、最後に 「Stay hungry, stay foolish.」 と締めくくった。
 彼は、56才の人生を生ききったように思う。60年以上を生きながら、あまりの隔たりに自分を恥ずかしくも思う。私たち世代は若者世代に対し、何をしているのだろうか。改めて教えられている。

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